女性のためのリベラルアーツ講座

スパイラルとの協働事業として開催している連続講座。生き方、暮らし方、時短、心とからだ・・など様々なテーマに合わせて、多様なゲストをお迎えし、「リアル」な体験談に学びます。

    【レポート】後期 第2回 女性が輝く×社会×エンパワーメント

    2015年12月10日

    【レポート前編、後編】後期 第2回『女性が輝く×社会×エンパワーメント』2015年11月19日
     
    <前編>
    「女性のためのリベラルアーツ講座」、後期2回目のテーマは『女性が輝く社会』。政府が掲げるスローガンに、疑問を感じている方も多いかもしれません。今回は、そんな悩める女性たちが、ライフイベントの変化にも対応しつつ、しなやかに生きるためには何が必要なのか、子育てママでジャーナリストの治部れんげさんと、元女性活力・子育て支援担当内閣府特命担当大臣を務めた、参議院の森まさこ議員をゲストにお迎えし、トークセッションを行いました。熱い議論の一部を、総合コーディネーターの西田陽光さんの進行とともにレポートします。
     
    男性以上に“男性”だった記者時代
    西田:まずはジャーナリストの治部れんげさん。せっかくなので、ご自身の経験にもとづいたことをお話しいただきましょう。
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    治部:よろしくお願いします。簡単に自己紹介をさせて頂きますと、私は新卒で日経BPに記者として入社し、16年間勤めました。今はフリーランスのジャーナリストで、広報のコンサルなども手がけています。会社員時代から、「女性が仕事を続けるのは当然」と思っており、仕事観については男性以上に“男性”でしたね。ところが2000年、26歳だった時に、大学の同級生だった現在の夫が渡米することになりまして。日米の遠距離になったのですが、私も2006年に休職して、研究のため、留学中の夫のもとに赴きました。

    西田:研究者であるパートナーの指導教授が、なんとワーキングマザーだったんですよね。

    治部:そうです。夫婦ともに大学教授の、ワーキングカップルでした。あるとき、夫の指導教授が「私、出産するから来週のミーティングはナシね!」と。彼女は産後、すぐに復帰しました。驚きましたね。その教授の夫は、「家事は分担して当然」という意識。こうして、公的な有給の産休・育児制度がないアメリカで、上手く家庭をマネジメントしているワーキングカップルを目の当たりにして、「働きながら子どもを育てるのも、良いかもしれない」と思えたんです。

    西田:頭でっかちな理論ではなく、生きた人から学ぶ。リアルな感覚に根ざしているからこそ、自分のライフスタイル観に与える影響は大きいんですよね。
     
    男性中心の会社には「体調が良い人」しか残っていない
    治部:アメリカ留学中に、「妻が管理職、子ども2人」というワーキングカップルを何組も取材し、研究にまとめました。帰国後、31歳で第一子を授かったのですが、つわりがひどくて。仕事との両立は大変でした。自分が経験してみて分かったのですが、長時間労働で、男性中心の会社には「体調が良い人」しか残っていないんですね(会場:笑い)。私の場合は、たまたま上司が気遣ってくれましたが……。今でも、妊娠している女性にかかわらず、体調が悪い人に優しくできる社会でなければいけないという思いがあります。

    西田:ではここで、参議院議員の森まさこさんに伺いましょう。森さんは、ここまでどうやって、人生を切り開いてきたのですか?
     
    思春期の頃に、家業が立ちゆかなくなった
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    森:今朝は高2と中2の子どもを学校へ見送ってから、福島へ行き、先ほど戻ってきました。毎朝、崖っぷちの両立生活です(会場:感動のため息と笑い)。私は思春期の頃に、家業が立ちゆかなくなりまして。高校進学はせず、働くつもりでした。それが、学校の先生や弁護士の方々のおかげで、なんとか高校に行くことができた。大学進学の後は、こうした経験もあって「誰かの役に立ちたい」と、人権問題を扱う弁護士になったんです。どんな親の元に育っても、子どもが教育を諦めざるをえない社会は、なんとかしなくてはいけない。

    西田:森さんは弁護士時代、産まれたばかりのお子さんを連れて、ニューヨーク大学に渡ったとか。

    森:1999年に、日本弁護士連合会が「人権弁護士を育成しよう」ということで、留学の2期生として渡米しました。当時0歳だった長女を連れて、夫は日本で留守番です。驚いたのが、アメリカでは「ベビーカーを押している女性は女王様」なんですよ。段差に困っていたら、トム・クルーズのような男性がサッと手を差し伸べて、助けてくれる(会場:笑い)。日本では、多くの人が、困っているお母さんを見ても素通りです。
     
    日本とアメリカでは、子育て支援の文化が違う?
    治部:私もアメリカに留学して実感したのは、根本的に「子どもを社会がどう受け入れるか」が違うということ。子どもは神様からの授かりもの、というような考え方があると感じました。右派も左派も関係ありません。公的な育休・産休制度が整っていないアメリカで、母親たちが子どもを産めるのは、おそらくそうした「子どもを支える土壌」があるからではないでしょうか。

    西田:子育てに関しては、なんでも政府に頼って、制度=「ハード」の充実を求めるのではなく、文化=「ソフト」の部分が重要ということですね。
     

    <後編>
    「女性のためのリベラルアーツ講座」、後期2回目のテーマは『女性が輝く社会』。政府が掲げるスローガンに「モヤモヤ」を抱える女性も多いかもしれませんが、現代社会で「私らしく輝く」ために必要なことは、何でしょうか。子育てママでジャーナリストの治部れんげさんと、元女性活力・子育て支援担当内閣府特命担当大臣を務めた、参議院の森まさこ議員と一緒に議論しました。盛り上がったトークセッション、後編は「男性中心社会の変化」について語ります。前編と合わせてどうぞ。
     
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    2007年頃から、男性たちが変わってきた
    治部:日本でも2006~2007年頃から、人口減少への危機感で政府が動き始めました。それまで経済誌で見向きもされなかった「女性労働の問題」が、ようやく男性たちにも読まれるようになったんです。

    森:私は2012年に初当選し、第2次安倍内閣で大臣として「女性活力・子育て支援」を兼任しました。女性の社会進出と、男女がともにワーク・ライフ・バランスを叶えるという意味では、海外の事例がとても参考になります。たとえばフィンランドは、40年間少子化に悩んでいたんですね。ところが、今では出生率が2.0近くまで回復。保育が充実し、働く女性も増え、政府の大臣は半分が女性です。きっかけは、男性の「産休」を義務化したこと。画期的でした。右派も左派も関係なく「国民の意識改革」をしたんです。スウェーデンもそうです。

    西田:海外の事例も含めた「政策」のお話、ぜひぜひ、していただきましょう。
     
    文科省と厚労省の大臣を引き合わせた「おにぎり作戦」
    森:保守派の政治家が動くと、社会は変わります。その意味で、「女性活躍」を打ち出した安倍さんの功績は大きい。ちょっとオフレコですが、私は大臣時代、少子化対策に予算を付けたがらない財務省とも戦いました。金融庁の官僚出身だったので、やりやすかった(会場:笑い)。

    西田:子育て支援は、文科省と財務省、厚労省などがそれぞれ対立して、なかなか上手くいかないことも多いですよね。それらの大臣を引き合わせた、森さんの「おにぎり作戦」について聞かせてください。

    森:大臣は議員と違って、本当に忙しいんですね。大臣同士が、話す時間もありませんから、省庁の壁がなかなか越えられない。ジレンマです。そこで考えました。「朝ごはん」の時間を活用すればいいと。早朝、私の大臣室に、田村厚労大臣と下村文科大臣(いずれも当時)を呼んで、私の地盤である福島のお米で「おにぎり」を作っていき、一緒に食べたんです。いわゆる「おにぎり大作戦」(会場:笑い)。朝ごはんをご一緒したことで、幼児教育の無償化、3大臣が合意できました。

    治部:記者として、ここまでリアルなネゴシエーションのお話を伺えるのは、非常に興味深いです(会場:笑い)。
     
    海外の投資家も、日本の「女性活躍」を見ている
    治部:森さんは自民党ですが、子育て支援にかんしては、非常にリベラルですよね。格差是正となると、政治家たちはすぐに「右」か「左」に分かれてしまう。でも、子どもを支えるという点に関しては、保守派や財務省、経団連などの「おじさんたち」を巻き込むことが必要だと、私も考えています。
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    西田:広い意味での「ファシリテーション」ですよね。

    治部:財務省や経団連を巻き込むことの、何がすごいか。「女性の働き方」に関する情報公開が進むということです。今、日本企業の株は多くが海外の投資家によって買われています。海外の投資家は、人口減少にあえぐ日本で、企業がどうやって業績を上げられるのかを見ている。少子化対策に積極的な企業の株価が上がる、ということも起きています。だからこそ、保守的だった大企業も、女性管理職比率の公表や、働き方改革、生産性・業績を上げるために動かざるをえない。もちろん「業績のためだけに女性を登用する」のではなく、子育て支援と合わせて「働き方」を変えていくことが重要です。ところで、最後に1点、お伺いしたいのですが、森さんのご出身でもある「地方」の状況はいかがでしょうか。
     
    女性活躍と「地方」の現状
    森:地方は正直なところ、まだまだです。福島のおじさんたちは、みんな良い人ですが、「女性が活躍し過ぎると、子どもが減るんじゃないの」なんて言っちゃう人もいる。そうではなくて、両立支援でしっかり「子どもを支える社会」を実現することが大事なんだと伝えていきたい。地方こそ、女性がさまざまに輝ける場所にしたいと思っています。

    西田:今日は非常に多方面のお話を伺うことができました。会場の皆さん、ぜひ今日のお話を、ツイッターやブログ、長電話でもいいです。お友達にたくさん、伝えて下さい。女性が「輝く」とはどういうことなのか、これからも皆さんで議論していきましょう。(了)
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    【登壇者プロフィール】
    ゲスト:
    治部れんげ(ジャーナリスト)
    1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経エンタテインメント!」「日経ビジネス」「日経ビジネスアソシエ」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。2013年4月より昭和女子大学現代ビジネス研究員。同大学の「キャリアカレッジ」構想準備の調査委員会、オンライン教育に関する調査研究委員会などに所属。経済ジャーナリストとして、ダイバーシティ・マネジメント、人材育成(スキルアップ)、女性のキャリア形成、男性の家庭参加、ワーク・ライフ・バランス、女性と政治などを取材、執筆。最近の連載/執筆記事に、「日経DUAL」連載の「怒れ!30代」シリーズ、「東洋経済オンライン」連載の「進化するニッポンの夫婦」シリーズ、「世界キャリア家族のリアル子育て戦略」シリーズ、Yahoo!ニュース個人の「治部れんげ 次世代中心主義」など。
     
    森まさこ(参議院議員/元女性活力・子育て支援担当内閣府特命担当大臣)
    1964年福島県いわき市生、東北大学法学部卒。弁護士。米国NY大学法科大学院客員研究員(消費者保護法) ○参議院 東日本大震災復興及び原子力問題特別委員、財政金融委員、国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会理事○自民党 環境部会長 治安・テロ対策調査会長
    <過去の主な役職>○金融庁課長補佐・検査官、日弁連国際人権委・消費者問題対策委・犯罪収益剥奪PT、弁護士会子どもの権利委・男女共同参画PT○元国務大臣女性活力・子育て支援担当、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全、少子化対策、男女共同参画)○参議院行政監視特別委員長・法務委員会理事・消費者問題に関する特別委員○党副幹事長・法務部会長・情報調査局次長
     
    総合コーディネーター:
    西田陽光(一般社団法人次世代社会研究機構代表理事)
    1997年、非営利の政策シンクタンク「構想日本」の立ち上げメンバー(運営委員)パブリシティ担当ディレクターとして毎月JIフォーラムを17年間企画運営する。2013年6月末退社。2003年(社)日本家庭生活研究協会の常務理事として「男性のワークライフバランス」事業責任者として「お父さんの十カ条」冊子作成、「ワークショップ用プログラム」の開発や男性の家庭参画推進の数々の啓蒙推進企画を実施。2013年一般社団法人次世代社会研究機構代表理事に就任。2014年「特別養子縁組推進キャンペーン」を日本財団と行う。「子育て知事同盟」応援企画を長野県と企画。子育てパパママ支援企画・女性支援企画を数々開催。

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